美しい獣がいた。
彼は森の中で輝く魔法のようにあたりを照らしていた。
美しい獣がいた。
それは強く、勇ましい、最後の勇敢なるもの。
二つの満月に照らされて 獣は旅に出た。
彼は失った物語を取り戻すために 旅に出た。
大切な物の欠片を求め 旅に出た。
それはあまりにも皮肉な物語。
あまりにも残酷な物語。
しかし勇敢なる獣は恐れない。
ただひたすらに彼の信じた道を行く。
彼は獣であることを偽った。
それでも その果敢さに満ちた瞳の色を
だれが見逃すことがあろうか。
その高貴な瞳の輝きを
だれが否定することができようか。
彼は獣の王。 気高き漆黒の獣。
彼の息吹は すべてを赤黒く染めていく。
闇の中 獣の王はほほ笑んだ。
“ほら、この世界は僕たちのもの”
闇がざわめいた。
木霊する声はあまりにも澄んでいて
一片の穢れも持ち合わせてはいなかったのに・・・。
【 撮影・加工・詩 ― sei 】